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行動経済学

タピオカブームに学ぶ流行投資の罠|テーマ株はなぜ儲からないのか

タピオカブームを例に、テーマ株で利益を得るのが難しい理由を解説。早すぎる参入の負担と高値づかみの危険、幅広いインデックス投資を勧める理由を考えます。

注記: 本記事は投資助言ではありません。行動経済学・心理学の観点からお金の判断を考えるための情報提供です。

タピオカの流行とテーマ株は、人が集まるほど魅力的に見える点が似ています。 けれども、流行を早く見つけても、投資で利益を得られるとは限りません。早すぎれば待つ負担があり、行列ができた後には競争と高まった期待があります。長期の資産形成では、一つの流行に賭けるより、幅広い市場に分散する方法を勧めます。

今回は、本戸かなと真鍋 学が、タピオカを例に「ブームの前なら勝てたのか」「なぜテーマ株は難しいのか」を考えます。二人は説明用の架空の人物です。

そもそもタピオカブームは何だったのか

本戸かな

タピオカって、2019年に突然流行った印象があります。前からあったんですか?

真鍋 学

急に現れたわけやないで。大阪税関は、1993年ごろ、2004年ごろ、2019年ごろの三度のブームを挙げとる。背景や時期には諸説ある、という注記つきや。

タピオカはキャッサバのでんぷんから作る食品です。大阪税関の資料では、1993年ごろのエスニック料理、2004年ごろのドリンク店、2019年ごろの台湾発ドリンクとSNSが、各時期の背景として紹介されています。台湾のティーショップ・春水堂が日本に初出店したのは2013年。大行列のずっと前から商品を紹介する店がありました。

本戸かな

では、2019年にはどれくらい広がったんでしょう。

真鍋 学

全国のタピオカ輸入数量は、2018年の2,928トンから2019年には16,772トンへ増えた。専門店だけやなく、飲食チェーンや映画館まで扱うようになったんや。

ただし、流行を「SNSで見せるためだけの飲み物」と片づけるのも違います。前原・朴(2021)が539人に行った調査では、Instagramが情報を広め、購入意欲につながる一方、繰り返し買う理由には味や食感への好評価がありました。学生を多く含む調査で、全国の消費者全員を代表するものではありませんが、商品そのものを楽しんだ人もいたという点は押さえておきたいところです。

投資と似ているのは、人気に引っ張られる流れ

本戸かな

タピオカがおいしかったことと、投資の話はどうつながりますか?

真鍋 学

「話題を見て人が集まる」という流れが似とるんや。商品が広がるのも、注目株に買い手が集まるのも、人気そのものが次の人気を呼ぶことがある。

① きっかけ
新しい商品や話題が現れる
② 人が集まる
行列や上昇がさらに人を呼ぶ
③ 熱が落ち着く
期待と実際の需要が比べられる
④ 問い直す
自分は何を評価して買ったか
本戸かな

ブームが落ち着いた後、「何がよくて買ったんだっけ」となるんですね。

真鍋 学

そうやね。おいしいから買った飲み物なら理由は残る。でも、株を「みんなが買ってるから」だけで選ぶと、値下がりしたときの判断材料がない。行列は味の感想にはなるけど、決算書の代わりにはならんからな。

飲み物が優れていても、関連会社の株を買った人が儲かるとは限りません。 商品の需要、会社に残る利益、株を買った値段は、それぞれ別です。

ブーム前にタピオカ店を開けば、大儲けできたのか

本戸かな

なら、行列ができる前に店を開けばよかったんでしょうか?

真鍋 学

早く始めれば、場所や常連客を先に得られるかもしれん。でも、いつ流行るか分からん間も家賃、人件費、仕入れの支払いは続く。ブームの到着日は未定でも、家賃の支払日は毎月きっちり来るんや。

次の図は2013〜2021年の全国輸入数量です。流行前の需要がすぐには大きくならず、2019年に急増したことを示します。ただし、輸入数量は個々の店の売上や利益ではありません。

2013年から2021年の全国タピオカ輸入数量 2013年1788トン、2014年1801トン、2015年2042トン、2016年1768トン、2017年2053トン、2018年2928トン、2019年16772トン、2020年5133トン、2021年2641トン。 全国のタピオカ輸入数量(トン) 2013〜2021年|大阪税関の統計を基に作成 1,78813 1,80114 2,04215 1,76816 2,05317 2,92818 16,77219 5,13320 2,64121 横軸は西暦の下2桁
大阪税関「タピオカの輸入 その後」掲載の全国輸入数量から当ブログ作成。品目にはタピオカ代用物を含み、2021年は資料公表時の確々報値。輸入量は個々の店の売上や利益を示さず、家賃などの費用も表していません。

2013〜2017年の輸入数量は年間約1,800〜2,100トンで推移しました。この図だけでは、早く開いた店が黒字だったかは分かりません。大阪税関は2019年末から2020年初めの月別輸入量の減少について、ブームの沈静化だけでなく冬場のドリンク需要の減少にも触れています。新型コロナによる生活の変化もあり、年別の減少を「ブームが去ったから」と一つの理由で決めつけることはできません。

割安株も、評価されるまで何年も待つことがある

本戸かな

ブームの前から待つのは、割安だと思う株を買って評価を待つ「バリュー投資」に似ていますか?

真鍋 学

「気づくのが早くても、いつ評価が変わるか分からない」という点は似とる。住友商事は、PBRが2008年ごろから1倍を下回り、2023年6月に1倍近くまで上がったと報告しとる。市場の低い評価が長く続いた例や。

PBRは、株価が帳簿上の純資産の何倍かを示す指標です。ただし、1倍未満なら必ず割安という意味ではありません。住友商事自身も2021年の報告書で、当時の低い市場評価の背景に、事業価値が損なわれることや将来の投資成果への懸念があると説明しています。当時の投資家には、あと何年待つのか、本当に評価が見直されるのかは分かりませんでした。

本戸かな

株を持つ間も、店の家賃みたいな費用がかかるんですか?

真鍋 学

そこは違う。株を保有するだけで店の家賃や人件費を直接払い続けるわけやない。ただ、待つ間の値下がりや、ほかの投資機会を選べないことはある。「早く見つけた=利益」にはならんのや。

テーマ株はなぜ儲からないのか

本戸かな

テーマ株は、ブームが見えてから買うと遅い。でも前から買うと長く待つかもしれない。どこが一番難しいんでしょう?

真鍋 学

テーマ株が必ず儲からんわけやない。難しいのは、「流行が続くか」「どの会社が勝つか」「株価が高すぎないか」を同時に見なあかんことや。流行の真ん中では天井も見えへんし、まだ姿を見せていない競合もおる。

話題が広がるほど将来への期待は株価に先に織り込まれます。商品がよく、会社が成長しても、買った時点でその成功を先取りした高い株価なら、投資家の利益にはつながりません。反対に、人気が落ち着いた後も商品を好きな人がいるかもしれません。商品への評価と、投資の成果を混同しないことが大切です。

なぜインデックス投資を勧めるのか

本戸かな

一つのブームを当て続けなくていい方法はありますか?

真鍋 学

長期の資産形成なら、幅広い市場に分散するインデックス投資を勧めるで。「卵を一つの籠に盛るな」という考え方や。タピオカ店一軒だけに賭ける代わりに、飲食も、医療も、製造も、情報通信も、いろんな事業を少しずつ持つイメージやね。

単一の流行・企業に集中
その人気と会社の成否に資産が大きく左右される
広い市場の指数に分散
タピオカ以外も含む、多様な事業の成果を持つ
本戸かな

「オルカン」なら、世界中のブームを全部つかめるんですか?

真鍋 学

全部ではないで。オルカンが連動を目指すMSCI ACWIは、主に先進国・新興国の大型・中型上場株が対象や。そこに世界各地の成長企業が入れば成果の一部を取り込めるけど、未上場の店や指数に入らない会社は直接持てへん。

日本の幅広い企業を含む指数の例がTOPIXです。対象を世界に広げる例として、全世界株式の投資信託「オルカン」があります。タピオカだけでなく、おもちゃ、化粧品、医療など、多くの分野にまたがるイメージです。ただし、指数は時価総額の大きい企業の影響を強く受けます。世界の株式市場が下がれば損失が出ますし、為替変動も影響します。特定のテーマだけに絞った指数なら、分散の幅も狭くなります。

本戸かな

次のタピオカを当てなくても、さまざまな事業の成長に参加できる可能性があるんですね。ただし、指数の中身や費用、リスクは確認する、と。

真鍋 学

その通り。飲むタピオカは一杯ずつ選んでええ。でも資産形成まで一つの流行だけに預けんでええんや。幅広い指数も元本割れはするから、自分の目的に合うかは確かめような。

出典・参考資料

本記事は流行と投資心理の一般的な解説であり、投資に関する個別の助言ではありません。オルカンは幅広い指数の例で、特定の投資信託の購入を勧めるものではありません。過去の値動きは将来の成果を保証しません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。