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シミュレーション

失われた30年に毎月5万円を積立てたらいくらになったか――日本株シミュレーション

「失われた30年」の日本株に毎月5万円を積み立て続けたらどうなったのか。実際の日経平均の値動きで計算すると、元本1,800万円が約4,756万円に。バブル最高値から始めた最悪ケース、一括投資との差、オルカン・S&P500との比較まで、計算方法を明記して検証します。

注記: 本記事は投資助言ではありません。行動経済学・心理学の観点からお金の判断を考えるための情報提供です。

「日本株なんて、失われた30年でずっと横ばいだったんでしょ?」 「日本に投資してもムダ。やっぱりアメリカでしょ」

よく聞く話です。実際、日経平均がバブル期の最高値を更新したのは34年後の2024年でした。数字だけ見れば、たしかに厳しい30年です。

でも、ここで素朴な疑問が浮かびます。

もし、その”失われた30年”の間ずっと、毎月コツコツ積み立てていたら、いくらになっていたのか?

今回は、実際の日経平均の値動きを使ってこの問いに答えます。結果は、多くの人の予想を裏切るものでした。

まず、30秒で結論だけ。

📌 30秒でわかる検証結果

📈 1995年から毎月5万円を30年間積立
元本1,800万円 → 約4,756万円(+約2,956万円/+164%)

😱 バブル最高値の1989年末から積立(36年)
元本2,160万円 → 約5,422万円(+約3,262万円/+151%)

💥 同じ1989年末に「一括」で1,800万円投資
→ 約1,845万円(+2.5%だけ)。買い方だけでこれだけ違う

🩸 ただし途中は苦しい
2002年末には評価額が元本の▲38%〜▲48%まで沈んでいた

💡 なぜ増えた?
暴落期に安く大量に買えたから。失われた30年は、積立投資家にとって長いバーゲンセールだった

なぜこんな結果になるのか。計算方法を明記しながら、順に見ていきます。


1. 「失われた30年」とは何だったのか

まず前提を確認しましょう。

失われた30年とは、1990年代初頭のバブル崩壊から、日本経済が長く低成長とデフレに苦しんだ期間を指す言葉です。当初は「失われた10年」と呼ばれ、それが20年になり、30年になりました。名前が更新されていくこと自体が、この期間の重さを物語っています。

この間に何が起きたのか、駆け足で振り返ります。

📉 失われた30年の主な出来事

1990〜1992年バブル崩壊。株価と地価が同時に崩れる
1997〜1998年金融危機。大手証券・銀行の破綻が相次ぐ
2000〜2002年ITバブル崩壊。日経平均は8,000円台へ
2008年リーマンショック。再び8,000円台へ逆戻り
2011年東日本大震災。年末終値は8,455円
2013年〜金融緩和で反転。2024年、ついに最高値を更新

株価のグラフで見ると、その形はもっと残酷です。

日経平均の36年(各年末終値・概数)

1989年末の38,915円という最高値を更新したのは34年後の2024年。途中2002年・2008年・2011年には8,000円台まで沈んだ。

数字で押さえておきましょう。

  • 1989年末:38,915円(史上最高値)
  • 2002年末:8,578円(最高値から約78%減
  • 2008年末:8,859円(リーマンショック後)
  • 2011年末:8,455円(この36年間の年末終値では最安)
  • 2024年末:39,894円(ようやく最高値を更新)

34年かけて、ようやく元の水準に戻った——これが「失われた30年」の実像です。1989年に一括で買って持ち続けた人は、34年間ほぼ報われませんでした。

では、コツコツ積み立てた人はどうだったのでしょうか。


2. 計算方法(前提をすべて明記します)

シミュレーションで一番大事なのは前提の透明性です。ここを曖昧にした試算は信用に値しません。今回の計算条件をすべて開示します。

🧮 シミュレーションの前提条件

投資対象日経平均株価に連動する商品を買い続けたと仮定
投資額毎月5万円(=年60万円)を継続
購入タイミング計算を単純にするため、各年末の終値で年1回まとめて購入したものとして計算
配当含めない(日経平均は配当を含まない指数のため)。実際はさらに有利になる
手数料・信託報酬含めない(実際は年0.1〜0.5%程度かかる)
税金含めない(NISA口座なら運用益は非課税)
株価データ各年末終値の概数を使用。結果はすべて概算値です

※NISAは2014年開始のため、実際に当時から使えたわけではありません。「同じ金額を非課税で積み立てられたら」という仮定の試算です。

なぜ「月5万円」なのか

金額の設定には意味があります。

月5万円 × 12ヶ月 × 30年 = 1,800万円

この1,800万円は、現在のNISAの生涯投資枠とぴったり同じ金額です。つまりこの試算は、「NISAの枠を30年かけてきっちり使い切ったら、どうなるか」という、かなり現実的なシミュレーションでもあるのです。

ちなみに年60万円は、つみたて投資枠の年120万円のちょうど半分。決して無茶なペースではありません。


3. 【検証A】1995年から30年間、積み立てたら

まずは、バブル崩壊後の低迷期のまっただ中、1995年から始めたケースです。

「もう株はダメだ」「日本経済は終わった」——そう言われ続けていた時期に、それでも黙々と月5万円を積み立てた人がいたとしたら。

検証A:1995年〜2024年(30年間)

投資した元本
1,800万円
最終評価額
約4,756万円

損益 +約2,956万円(+164.2%)

「失われた30年」の日本株で、元本が約2.6倍に。配当を含めればさらに増えます。

驚かれたでしょうか。あの低迷した日本株でも、積み立てていれば元本が約2.6倍になっていました。

「日本株はダメだった」というイメージと、まるで違う結果です。

ただし、道のりは平坦ではなかった

ここが今回いちばん正直にお伝えしたい部分です。結果だけ見れば大成功。でも、途中は本当につらいのです。

30年間の「元本」と「評価額」の推移を並べてみます。

検証Aの30年:元本 vs 評価額の推移

灰色の点線(元本)より緑の線(評価額)が下にある期間=含み損。1996年から2012年まで、多くの年で元本割れしていた。

グラフの前半をよく見てください。緑の線が灰色の点線より下にある期間——これがすべて「含み損」です。

具体的な数字で見るとこうなります。

節目の年の状況(検証A)

年末元本評価額損益率
2000年(6年目)360万円302万円▲16.1%
2002年(8年目・底)480万円297万円▲38.2%
2005年(11年目)660万円792万円+20.0%
2008年(リーマン)840万円561万円▲33.2%
2011年(震災)1,020万円693万円▲32.0%
2015年(21年目)1,260万円1,866万円+48.1%
2020年(26年目)1,560万円3,061万円+96.2%
2024年(30年目)1,800万円4,756万円+164.2%

注目してほしいのは2002年です。

8年間、毎月5万円を欠かさず入れ続けて480万円。それが297万円になっていた。180万円以上のマイナスです。しかもこのとき、世の中の空気は「株なんてやるものじゃない」一色でした。

リーマンショックの2008年も同じです。14年間積み立てた840万円が561万円。280万円近い含み損。

さらに2011年、震災の年。17年も続けてきた1,020万円が693万円。300万円以上のマイナスです。

積立を始めて17年経っても、まだ報われていなかったのです。

「積立投資は報われる」——ただしそれは、この17年間の含み損に耐えた人だけの話。

ここを飛ばして結果だけ語るのは、フェアではないと思います。


4. 【検証B】最悪のタイミング、バブル最高値から始めたら

「でも1995年は、すでに株価が大きく下がった後じゃないか」——そう思った方は鋭いです。

そこで、考えうる限り最悪のタイミングで検証します。1989年末、日経平均が史上最高値38,915円をつけた、まさにその時から積み立てを始めたケースです。

これ以上悪いスタートは、日本株の歴史上存在しません。

検証B:1989年末〜2024年(36年間・史上最悪のスタート)

投資した元本
2,160万円
最終評価額
約5,422万円

損益 +約3,262万円(+151.0%)

史上最悪のタイミングで始めても、資産は約2.5倍になりました。

ただしこちらも、途中は検証A以上に過酷でした。2002年末には、元本840万円に対して評価額440万円。実に**▲47.6%**、資産が半分近くまで削られています。

13年間積み立てて、資産が半分。ここで投げ出さなかった人だけが、この結果を手にしたことになります。

決定的な比較:同じ日に「一括投資」していたら

ここが今回いちばんお伝えしたい部分です。同じ1989年末に、1,800万円を一括で投資していたらどうなったか。

同じ「1989年末スタート」でも、結果はこれだけ違う

方法元本最終評価額損益率
💥 一括投資1,800万円約1,845万円+2.5%
📈 毎月5万円の積立2,160万円約5,422万円+151.0%

36年間で、一括投資はほぼ横ばい。積立は2.5倍に。

一括投資の**+2.5%**という数字を、もう一度見てください。

36年間です。人生の大半を費やして、増えたのは45万円。物価の上昇を考えれば、実質的には目減りしています。

同じ相場、同じスタート日。違うのは買い方だけ。それでこれだけの差がつきました。


5. なぜ、こんな結果になるのか

理由はシンプルです。暴落期に、安くたくさん買えたから

日経平均が8,000円台だった2002年や2011年を思い出してください。同じ5万円でも、38,915円のときと比べれば4倍以上の口数が買えます。

同じ5万円で買える量は、株価でこれだけ変わる

時期日経平均5万円で買える量(1989年比)
1989年末(最高値)38,915円1.0倍
2002年末8,578円約4.5倍
2008年末8,859円約4.4倍
2011年末8,455円約4.6倍

つまり——

「失われた30年」は、積立投資家にとって”長いバーゲンセール”だった。

株価が低迷している間、私たちは知らないうちに大量の口数を仕込んでいたのです。そして2024年に株価が戻ったとき、その大量の口数が一気に価値を持ちました。

言い換えれば、含み損に耐えていた期間こそが、いちばん資産を仕込んでいた期間だったということです。あの2002年の「▲38%」は、振り返れば最高の買い場でした。

これは、以前の記事でお話ししたドルコスト平均法の本質そのものです。

👉 一括投資のほうが儲かるのに、なぜ積立が正解なのか――ドルコスト平均法の心理学

「もし10年でやめていたら」

ここで、もうひとつ試算してみます。1995年から10年間だけ積み立て、2004年でやめて、あとは売らずに放置していたらどうなったか。

10年でやめた人 vs 30年続けた人(2024年末時点)

元本評価額
10年でやめて放置600万円約1,813万円
30年続けた1,800万円約4,756万円

10年でやめた人も元本の3倍に増えている。ただし、続けた人との差は約2,900万円。

10年でやめて放置した人も、元本600万円が約1,813万円と3倍になっています。売らずに持ち続けたからです。

それでも、続けた人との差は約2,900万円。この差が、老後の暮らしを大きく分けます。


6. では、オルカンやS&P500だったら?

「日本株でこれなら、アメリカ株ならもっとすごいのでは?」——当然の疑問です。

参考として、同じ**毎月5万円×30年(元本1,800万円)**を、想定リターン別に計算しました。

毎月5万円×30年(元本1,800万円)を年率別に試算

全世界株・S&P500は「よく言われる想定リターン」を一定と仮定した試算で、将来を保証するものではありません。

投資先想定年率最終評価額損益
日本株(年率一定と仮定)約2.4%約2,632万円+約832万円
日本株(実際の値動き約4,756万円+約2,956万円
全世界株(オルカン)5%と仮定約4,161万円+約2,361万円
S&P5007%と仮定約6,100万円+約4,300万円

ここで、表の1行目と2行目を見比べてください。同じ日本株なのに、2,632万円と4,756万円。2,000万円以上も違います。

なぜか。1行目は「毎年きれいに2.4%ずつ増えた」と仮定した計算だからです。現実の日本株はそんな動き方をしませんでした。8,000円台まで沈み、そこから4倍以上に戻った。この激しい上下があったからこそ、安い時期に大量の口数を仕込めたのです。

価格が乱高下したことは、積立投資家にとって「損」ではなく「得」だった。

これは直感に反しますが、非常に大事なポイントです。値動きが荒いほど、積立の効果は大きくなります。

そして注目すべきは、実際の日本株(4,756万円)が、想定5%の全世界株(4,161万円)を上回っていること。「日本株はダメだった」という常識が、少なくとも積立という買い方においては当てはまらなかったのです。

もちろんS&P500の6,100万円には及びません。ですが今回いちばん大事なのは、そこではありません。

「世界最悪クラスの低迷相場」だった日本株ですら、積み立てれば報われた。

この事実です。投資先選びも大切ですが、それ以前に「続けたかどうか」が結果を決めていたのです。


7. この検証から学べる、3つの実践的な教訓

過去の数字を眺めるだけでは意味がありません。今日から使える形に落とし込みます。

教訓①:暴落は「損」ではなく「仕入れ」

積立を続けている人にとって、暴落は資産を安く仕込めるチャンスです。実際、この30年でいちばん資産を増やしたのは、2002年・2008年・2011年に買った分でした。

ニュースが「株価暴落」と騒いでいるとき、それは積立投資家にとってセール開催のお知らせです。もちろん、その渦中で平静でいるのは簡単ではありませんが。

教訓②:「含み損17年」を覚悟しておく

検証Aでは、2011年(17年目)まで元本割れの年がありました。これを知らずに始めると、多くの人は途中で心が折れます

逆に「そういうものだ」と最初から知っていれば、耐えられます。予測できない不安は怖いものですが、予測できる不安は準備できるのです。

👉 「投資が怖い」は正常です――恐怖の正体とコンフォートゾーンの抜け方

教訓③:積立額は「絶対に止めない額」にする

今回の結果は「30年間、一度も止めなかった」という前提の上に成り立っています。

月5万円が苦しくて2002年にやめてしまえば、297万円の損を確定させて終わりでした。月3万円でも、止めずに続けるほうが強い。生活を圧迫しない金額に設定することが、結局はいちばんのリターンにつながります。


8. 結論――「どこに」より「続けたか」

まとめます。

  • 失われた30年の日本株でも、1995年から毎月5万円の積立で元本1,800万円が約4,756万円
  • バブル最高値という最悪のタイミングから始めても、2,160万円が約5,422万円
  • 同じ日に一括投資していたら36年で**+2.5%**。買い方だけでこれだけ違った
  • ただし途中は**▲38〜48%の含み損**が長く続いた。結果だけを見てはいけない
  • 増えた理由は、暴落期に安く大量に買えたから。低迷期は積立投資家にとってバーゲンだった

もちろん、これは過去の話です。同じことが未来に起きる保証はどこにもありません。

それでも、この検証が教えてくれることがあります。

「日本はもうダメだ」と言われ続けた30年ですら、淡々と積み立てた人は報われた。 相場が悪いことは、積立をやめる理由にはならない。むしろ、安く買える時期だった。

いま、株価が高いと感じて始めるのが怖い人もいるでしょう。逆に、暴落が来て不安になっている人もいるかもしれません。

でも、この36年のグラフを思い出してください。あの絶望的な低迷期に積み立て続けていた人が、いちばん報われました

相場を予測する必要はありません。必要なのは、やめないことだけです。

👉 「株式の死」はまた訪れるのか――NISAブームの今こそ知りたい、株が16年眠った時代


出典・参考資料

株価データ

  • 日経平均株価の各年末終値(概数)  日本経済新聞社が算出・公表する指数にもとづく(日経平均プロフィルにて公表)

制度に関する情報

シミュレーションについて

  • 本文中の試算(4,756万円 / 5,422万円 / 一括投資1,845万円など)は、記載した前提条件にもとづき当ブログが独自に計算したものです。日経平均は配当を含まない指数のため、配当・手数料・税金は考慮していません。

この記事のシミュレーションは、記載した前提条件に基づく概算であり、実際の投資成果を示すものではありません。株価データは各年末終値の概数を使用し、配当・手数料・税金は考慮していません。NISA制度は2014年開始のため、過去に遡って同条件で投資できたわけではありません。将来の運用成果を保証するものではなく、特定の投資商品を推奨するものでもありません。投資には元本割れリスクがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。